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zoom RSS 第2回京都フィギュアスケートフェスティバル&国体予選 (1) 太田由希奈選手

<<   作成日時 : 2006/11/24 20:28   >>

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「綺麗なレイバック&ビールマンスピンをありがとう。」国体予選でのフリー演技を終え、リンクサイドでのインタビュー後スタンドで待つご両親の元へ戻ってきた時、そう声をかけるとニッコリ微笑んでいた太田選手。でも「ビールマンスピンの時は軸がしっかりとれてへんかったからナァ〜。回転スピードも落ちちゃって、まだまだやと思うし…。」と自己分析はかなり厳しめ。それでも今シーズンで一番の出来に手ごたえを感じていた様です。

この国体予選での演技内容(「Fire Dance」)は、冒頭で目線を決めた踊りを見せた後3T+2Tのコンビネーションジャンプを綺麗に決め、レイバックスピンではビールマンのポジションも披露。このビールマンスピンは西日本選手権のフリー演技前やこの国体予選前に開催された「京都フィギュアスケートフェスティバル」でのEX「白鳥の湖」でも見せていましたが、競技会での演技に取り入れたのは初めて。その太田選手の心意気をとても粋に感じて、前述の様な言葉が口をついて出て来たのですが、まだ課題が上記以外にも色々とある様で「今後もずっと試合で入れていくかどうかはコーチと相談してみないと分からない。」そうです。

その課題の一つに“姿勢”をあげていたのは太田選手のお母さん。「もう少し頭を後ろに反らして、天井を向く様な姿勢をすればもっと綺麗に見える様になると思うんですけど…。」とおっしゃるので「由希奈さんは身体が柔らかいので、その様なポジションをとる事はさほど難しくないと思うのですが、何か理由があるのでしょうか?」と伺うと「『上を向くとバランスを崩しそうで怖い。』と本人が言うんですよ(笑)。」との事。スピンが得意な太田選手でもこういう苦手意識を持つものがあるのですね。ちょっと意外な一面を垣間見た気がしました。

このレイバック→ビールマンスピン後には、再び曲に合わせながら目線を効かした踊りを披露。手首をクルリと回す仕草もいいアクセントになっていますね。ジャンプも好調で3S、2A、2Lz(3Lzの跳び損ないではなく)と続けて成功させていました。コンビネーションスピンはキャメル(チェンジエッジ)→シット→レイバック→足換え→シット(身体を上にひねる→チェンジエッジ)→I字のバリエーション。曲調が少しスローになるとゆったりとしたターンを織り交ぜた踊りを披露していました。

そして、近畿ブロック、西日本選手権と続けてミスしてしまった3Sからの3連続ジャンプ。この日も6分間練習では綺麗な3S+2T+2Loを披露していたので「今度こそ決めてくれる!」という気持ちで本番の演技を観ていたのですが、太田選手自身も意識し過ぎたのか残念ながら今回の演技でも最初の3Sがすっぽ抜け1Sになってしまい、後ろにジャンプをつける事が出来ず。ただ今回の太田選手はそこで終わらず、直後の2Lo+2Loのコンビネーションジャンプに急遽もう一つ2Loを続け、変則的ですがここで3連続ジャンプを披露。このミスを最小限に抑えるカバーリングを即座にする様子から改めて太田選手の対応能力の高さを感じました。

フライングキャメル(チェンジエッジ)→ドーナツのコンビネーションスピンを見せた後は、リンクのロングサイドを横切るレイバック・イナバウアーを披露。この演技でのイナバウアーはかなり後ろへの反り具合が深く、逆U字のポジションを長く維持していたのが印象的。直後に続けるイーグル(アウトエッジ)までの流れも良く、ここは太田選手のかもし出す優雅さがとても感じられるパートですね。
フライングシットスピン(チェンジエッジ)を披露した後には3Tをしっかりと決め、クライマックスでのスパイラルはノーマル(右足フォアアウト→イン)→身体の前でキャッチフット(バック)→片手ビールマン(バック)のポジションを見せていました。
締めはストレートラインステップ。リンク中央で軽くジャンプをするなど緩急をつけながらのステップは、近畿ブロックでこの演技を最初に観た時から比べると、上半身の動きも合わせて随分と力強く大きな表現が出来る様になって来ていると感じました。最後は両手をあげたポーズで。演技後はリンクサイドで演技を観ていた醍醐の仲間たちに笑顔を見せていました。

その後、太田選手に「3Sからの3連続ジャンプはやっぱり意識しちゃった?」と尋ねると「自分ではそれほど意識していないつもりなんですけど…。今回も気付いたらパンクしていました(笑)。」と明るく笑いながらその時の状況を教えてくれました。「練習ではきっちり跳べているんだから、本当に後は気持ちの問題だけ。一度試合で跳べれば後はきっと大丈夫。」と声をかけると「ありがとうございます。頑張ります!」とニッコリ微笑む太田選手。
この近畿ブロックの時から太田選手に感じる“気持ちの明るさ”。今は一つ一つの試合で“勝つ”事よりも演技を披露出来る喜びの方が上回っているのかもしれませんね。今後どこまで自分の演技を高める事が出来るのか?その可能性を信じ、少しずつステップアップさせていくのを太田選手自身が楽しみながら取り組んでいる様に感じました。
ただ、この気持ちになるまでは今までに様々な出来事があった様で…。

「右足首を怪我してから約1週間ほど全く練習が出来ない日があったんですけれど、それがとても退屈で…。スケートの事を考えない様にしようと思っても、自分の周りにあるものが全てスケートに関係あるものばかりなんですね。私が他に趣味を持っていないというのもあったので、それはしょうがない事だったのですが…。そういったものを目にするたびに滑ることが出来ないつらさを日々感じていました。」と太田選手。そして、
「そのシーズンのスケートアメリカに出場した後、怪我をした右足首の治療に専念するため、それ以降の試合に出場しない事を決めたのですが、それからだんだんと気持ちが落ち込む事が多くなってしまって…。そのうちに指先が冷たくなったりと身体にも色々変調をきたす様になったので、その原因を本で調べてみるとそれらは“うつ病”の症状にぴったりだったんです。『あぁ、私は“うつ”なんだ。』とその時初めて自覚しました。」とも。
この頃は本当に右足首だけではなく、心にも大きな傷を負ってしまっていた様です。

翌年にはその心の傷と右足首の怪我を癒すため、米・コロラド州に住むキムコーチの自宅でホームステイを始めた太田選手。アイスダンスも習い始めるなど、新たな目標を立ててそれなりに充実した日々を送っていたそうです。
「その年の秋に米・ニューヨークで開催されるアイスショーにたまたま出演する事になったんです。久しぶりに大勢の観客の前で滑ったのですが、それがすごく気持ちよくて。本当はアメリカへは今まで続けて来たスケートに一区切りつけようと思って行ったんですけれど、このアイスショー出演で『もう一度、大勢の観客の前で滑りたい。』という気持ちになれました。」と太田選手。

女子シングル選手として競技生活を続けていく決意を太田選手にさせたきっかけは、まさにこのアイスショーだった訳ですが、前述の“うつ”の症状から立ち直ったきっかけを伺うと、
「う〜ん、それに関しては特にこれというきっかけはないかなぁ。アメリカで日々穏やかに過ごしているうちに自然と時間が解決してくれたんじゃないかなと思います。」という答えが返って来ました。
太田選手のお母さんにも同じ内容を伺うと、
「あの子が日本で怪我の治療をしている時は、本当にスケートを自分から遠ざけたがっていました。自分からすすんでリンクで滑る事もなく、TVで放送される試合も一切見ませんでした。やはり同じ日本の選手が滑っている姿を見たくなかったのでしょうね。アメリカへ行ってまた選手を続けたくなったのは、ホームステイ先のキム先生の自宅がアメリカのコロラドスプリングスという、比較的“田舎”にあった事が影響しているのかもしれません。『あまりにものんびりしていて、だんだんと刺激が欲しくなって来た。』と本人が言っていましたから。」と興味深いお話をして下さいました。

“うつ”の症状が回復してからは、他の日本の選手が病気や怪我などから苦労して復活して来た様子を見たり聞いたりしてかなり励まされた様です。太田選手のお母さんによると、
「鈴木明子選手が摂食障害から立ち直り復活された話は本当に熱心に聞いていましたね。『鈴木選手が復帰してから2年目で、これだけのジャンプが今跳べているのは本当にすごい!私も頑張らなきゃ!』と本人もかなり勇気付けられた様です。」という事でした。
太田選手本人は、
「スケートアメリカの放送を見ました。美姫ちゃんはトリノ五輪の頃はあんなに苦しんでいたのに、この試合ではそこから立ち直ってすごくいい演技をしていて、本当にここまで持ってくるのは色々大変だったんだろうなと思いました。」との事。そして、
「美姫ちゃんとはジュニアの頃、野辺山合宿で一緒になったりしてよく知った仲なので、その美姫ちゃんが頑張っている姿を見て、自分もやらなきゃ!と本当に励まされました。」と安藤選手の復活にかなり刺激を受けた様子。
そこで「今シーズンの目標は?」と尋ねると、
「やっぱり今の私にとって最大の目標は全日本選手権なので、そこで自分の出来る最高の演技を披露したいです。」という返事がかえって来ました。続けて
「最終グループの6人の中に入る自信は?」と質問すると、
「日本女子シングル選手の層の厚さは自分もよく分かっているので、正直難しいと思います。今の段階では3Lzや3Fなどのジャンプもプログラムに入っていませんし。全日本選手権までにこれらのジャンプを入れたプログラムが間に合うかどうか分かりませんが、本当に試合では自分の力を発揮したノーミスの演技を目指したいです。」と笑顔で答えてくれました。

自分の現状を冷静に把握し、決して焦らず定めた目標に向かってひたすら努力しようとする真摯な姿。フィギュアスケートはよく選手の「品(ひん)」が出るスポーツだと言われますが、今の太田選手にはまさにそれを感じます。しなやかで優美な演技の奥底から沸き立つ揺るぎない熱い闘志。それは今回の国体予選での演技が西日本選手権での演技から確実に進歩している事からも伝わって来ます。

国体予選で全ての選手の演技が終わり「この後に出場する試合の予定は?」と伺うと、
「関西インカレに出場します。(※この大会で太田選手は優勝)それから京都府民総体は貸し切りのとれたリンクでの練習があるので、こちらには出場しません。」との事でした。
小規模な大会にも出場して試合勘を養いながら、全日本選手権に向け着々とプログラムを仕上げつつある太田選手。
もう一度大勢の観客の前で心の底から晴れやかな笑顔を披露するまで、その努力は終わらないのでしょうね。

こぼれ話としては、太田選手のお母さんから伺った話によると、NHK杯での選手(出場選手以外)に対するIDカードもチケット同様に発行枚数が制限されかなり入手困難だそうです。以前はこんな事はなかったそうですが…。おかげで太田選手もアメリカで一緒に練習していた選手から「NHK杯に出場するから応援に来てね。」と言われているのに(12日の時点では)まだIDカードがなく「どうしよう!」といった状態だそうで…。その後、太田選手は首尾よくIDカードを手に入れられたのでしょうか?

※ 上記の内容を無断で引用、転載する事を一切禁じます。ご了承下さい。

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コメント(7件)

内 容 ニックネーム/日時
こんばんは。
国体予選会の太田選手の演技の一部を運良く映像で見ることが出来たのですが、2Lo+2Lo+2Loはとっさに判断して行ったものだったのですね。てっきり3S+2T+2Loは今回やめてプログラムを切り替えていたのかと思っていました。
安藤選手が、フランスGPのFSで3Lz+3Loを失敗したあとに、3Lzに2Loを加えて、挽回をしていたのを思い出しました。精神力が強くなったなと感心をしたのですが、困難を乗り切った人は以前より強くなるのかなと思いました。
実を言うと鈴木選手については注目をしていたのですが、以前そんなことがあったことを全く知りませんでした。今季好調をキープしているようですので、全日本選手権で良い結果を出せるよう期待をしています。
P.S.以前2回ほどブログの記事の私のブログ内で紹介をさせていただいたのですが、今回の記事を紹介することは可能でしょうか?
もし可能であれば、内容の転載、引用はせず、リンクを貼らせて頂き、概要を紹介するように致します。
ux3blust
2006/11/24 21:56
コメントありがとうございます。
フランス大会では安藤選手がフリー演技で最初に跳んだ3Lz+3Loを成功させる事が出来ませんでしたが、これは本当に不運でした。前の選手が滑って出来たわだちに安藤選手の着地した足のエッジが引っかかってしまい、後ろにつんのめる様にしての転倒。とっさに対処しようとしてもこれはさすがに難しいです。
この転倒を見て思い出したのが、2002〜2003シーズンの世界選手権(ワシントン)での荒川選手のSP。最後のスピンに入る時に、安藤選手と同じくエッジがわだちにはまり、まるで両足をいっぺんにすくわれたかの様なひどい転び方をしていました。
フランス大会での安藤選手はこのアクシデントにもめげず、最後までよく滑り切ったと思います。腰を痛めていたせいか、その腰が後ろに引けてしまい滑り自体はあまりよくなかったのですが、その後を何とかノーミスでまとめたのは大きいですね。今後の大きな自信になると思います。

※記事の紹介については、了解いたしました。
Memory
2006/11/25 23:39
こんばんは。
太田選手の特集が今日のフジテレビ系のすぽると内で放映されるそうです。放映時間は12月20日(水)0:10〜0:50となっています。
どんな内容か楽しみに待ちたいと思います。
ux3blust
2006/12/19 22:32
>ux3blustさん
いい特集でしたね。
やはり言葉だけでなく映像も一緒だと説得力がありますね。
こちらのBLOGでも触れてきた太田選手の前向きな姿勢と明るさ。
今回の放送で太田選手が随所で見せていた笑顔からそれを分かってもらえると思います。
この全国放送で紹介されていたので、もうこのBLOGでも触れていいと思いますが、現在太田選手は(日本にいる時)樋口豊コーチから指導を受けています。
という事で、その時の練習場所は神宮のスケートリンクです。
以前はあの秋篠宮佳子様とリンクの貸し切りで一緒になった事があるとか。
その時は佳子様にぶつからないかとハラハラしたそうで…(笑)。
京都にいる時はもちらん京都アクアリーナなどを使っているのですが、醍醐のクラブにはもう籍を置いていない関係でコーチをつけず一人で練習しているそうです。
全日本選手権では3Lzや3Fの入ったプログラム構成で挑戦して来る事を密かに期待しています。
太田選手にとって再挑戦はまだ始まったばかり。これからも前向きな姿勢を忘れず頑張っていって欲しいですね。
Memory
2006/12/20 03:21
こんばんは。
笑顔の中にも、まずは今シーズンを無事乗り切りたいとの強い意志が感じられました。
いろいろなインタビューや今回の特集を見聞きしていると、全日本選手権のことをかなり意識をしているようなので、目標である1ケタ台の順位を獲得し、来年のGPシリーズ出場につなげて欲しいです。
ux3blust
2006/12/20 23:08
私も、太田由希奈選手の、全日本選手権での演技をとても楽しみにしている一人です。DOIの演技を初めて観て以来大好きになりました。北村明子選手の記事同様、とても詳しく太田由希奈選手の近況がうかがえる記事です。こちらもTBさせて頂きたいのですがいかがでしょうか。
comet2054
2006/12/24 22:36
>comet2054さん
こちらに関しても了解しました。
北村選手に関するスレッドと同じ要領で
そちらでの紹介記事をこちらにお知らせ下さい。
宜しくお願いします。
Memory
2006/12/25 12:54

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